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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)3611号 判決

原告

松山春子

右訴訟代理人弁護士

渡部照子

須藤正樹

被告

東京都個人タクシー協同組合

右代表者代表理事

池田幸一

右訴訟代理人弁護士

田坂昭頼

三原次郎

主文

一  原告が被告の従業員たる地位を有することを確認する。

二  被告は、原告に対し、金一四五八万五一四五円及び内金一二五万四三四五円に対しては昭和五九年四月一四日から、内金一一二三万五九六〇円に対しては平成元年三月二一日から、内金二〇九万四八四〇円に対しては平成二年二月七日から支払済まで年五分の割合による金員並びに平成二年二月以降毎月二五日限り一か月金一九万〇四四〇円の割合による金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告が被告に対し労働契約上の従業員たる地位を有することを確認する。

2  被告は、原告に対し、金二三一二万九五八五円及び平成二年二月以降毎月二五日限り金二五万五六二〇円並びに金一二五万四三四五円については昭和五九年四月一四日から、金一八三〇万五〇四〇円については平成元年三月二一日から、金三五七万〇二〇〇円については平成二年二月七日から、金二五万五六二〇円については各支払期日の翌日からそれぞれ支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、被告の負担とする。

4  第二項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、昭和四九年二月一日に被告に職員として採用され、以来昭和五八年七月一五日まで経理部において被告の資産、収支の管理、計算の業務にたずさわり、昭和五六年一〇月一六日からは経理主任の役職にあった。昭和五八年七月一六日に原告は第二事業部に配転になり、チケット・クーポン事業にかかわる取引先への請求及び入金業務を行っていた。

2  被告は、昭和五八年一一月二日に原告を解雇(以下「本件解雇」という。)したとして、原告と被告との間の労働契約の存在を争っている。

3  原告の昭和五八年一一月当時の賃金は月額一九万〇四四〇円であり、毎月二五日限り支払われてきた。

被告では、昭和五八年一二月九日に前年の賞与に最低五〇〇〇円から最高一万五〇〇〇円の間の金額を加えた額が賞与として全従業員に支給された。原告の前年の賞与は四〇万六〇〇〇円であったので、原告は少なくともこの額に五〇〇〇円を加算した四一万一〇〇〇円を賞与として請求できる。

被告は、昭和五九年四月から賃金体系を変更し、給与規定に基づき賃金を支給することになった。原告は本件解雇まで主任の地位にあり、基本給の中の本給は原告について少なくとも三等級四級一三号の一八万八八〇〇円となる。その後、従業員は毎年二号づつ昇格の扱いを受けているので、原告の本給は、昭和六〇年度は一九万一六〇〇円、昭和六一年度は一九万四四〇〇円、昭和六二年度は一九万七二〇〇円、昭和六三年度は二〇万円になる。基本給の中の加給については、労働省編「資料賃上げの実態」により昭和六〇年は五パーセント、昭和六一年度は四・五パーセント、昭和六二年度は三・六パーセント、昭和六三年度は四・四パーセントとして計算し、労働白書の平成元年度の賃金上昇率により平成元年度は五・一七パーセントとして計算すると昭和六〇年度は五四〇〇円、昭和六一年度は一万二三二〇円、昭和六二年度は一万七六一〇円、昭和六三年度は二万五〇五〇円、平成元年度は一万二五七〇円となる。役付手当については、主任五〇〇〇円に該当する。特技手当については、原告は昭和五九年度はキーパンチャー二年目であり、キーパンチャー手当三〇〇〇円から一万円までの中の最低の三〇〇〇円に該当し、被告は特技手当については三年目以降は三〇〇〇円と一万円の中間を支給しているので、昭和六〇年度からは五〇〇〇円を支給されることになる。住宅手当は、独身者で扶養親族を有しない者三〇〇〇円に該当する。皆勤手当五〇〇〇円については、その支給対象者である。

したがって、原告の賃金月額は、昭和五九年度は二〇万四八〇〇円、昭和六〇年度は二一万五〇四〇円、昭和六一年度は二二万四七二〇円、昭和六二年度は二三万二八一〇円、昭和六三年度は二四万三〇五〇円、平成元年度は二五万五六二〇円になる。

被告では毎年本給の五か月分が賞与として支給されており、原告の賞与は昭和五九年度は九四万四〇〇〇円(一八万八八〇〇円×五か月)、昭和六〇年度は九五万八〇〇〇円(一九万一六〇〇円×五か月)、昭和六一年度は九七万二〇〇〇円(一九万四四〇〇円×五か月)、昭和六二年度は九八万六〇〇〇円(一九万七二〇〇円×五か月)、昭和六三年度は一〇〇万円(二〇万円×五か月)、平成元年度は一〇一万四〇〇〇円となる。

以上によれば、原告のすでに発生している賃金債権は次のとおりとなる。

昭和五八年一一月分の給与の未払分 八万一五八五円

昭和五八年一二月から昭和五九年三月までの給与及び賞与 一一七万二七六〇円

昭和五九年度の給与及び賞与 三四〇万一六〇〇円

昭和六〇年度の給与及び賞与 三五三万八四八〇円

昭和六一年度の給与及び賞与 三六六万八六四〇円

昭和六二年度の給与及び賞与 三七七万九七二〇円

昭和六三年度の給与及び賞与 三九一万六六〇〇円

平成元年四月から平成二年一月までの給与及び賞与 三五七万〇二〇〇円

合計 二三一二万九五八五円

4  よって、原告は、被告に対し、労働契約上の従業員たる地位を有することの確認、すでに発生した賃金債権二三一二万九五八五円及び内金一二五万四三四五円に対する訴状送達の日の翌日である昭和五九年四月一四日から、内金一八三〇万五〇四〇円に対する平成元年三月二〇日付請求の趣旨の変更申立書の送達の日の翌日である平成元年三月二一日から、内金三五七万〇二〇〇円に対する平成二年二月六日付請求の趣旨の変更申立書の送達の日の翌日である平成二年二月七日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに平成二年二月以降毎月二五日限り一か月二五万五六二〇円の割合による賃金及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1の事実は認める。

2  請求の原因2の事実は認める。

3  請求の原因3の事実のうち、原告の昭和五八年一一月当時の賃金が月額一九万〇四四〇円であり毎月二五日限り支払われてきたことは認め、その余は否認する。

三  抗弁

1  被告は、原告に対し、昭和五八年一一月二日に本件解雇の意思表示を行った。

2  本件解雇の理由は、次のとおりである。

(一) 原告は、車検ローン返済金として、昭和五八年一月七日江戸川第一支部から八万三二九〇円、同年二月一六日板橋第一支部から三万五八二〇円、同年四月七日江戸川第一支部から九万九五二〇円の合計二一万八六三〇円を受領しながら、これを被告に入金しなかった。

(二) 原告は、昭和五四年には、一月に四回、二月に六回、三月に四回、四月に六回、五月に五回、六月に三回、七月に五回、九月に三回(ほかに早退一回)、一〇月に一回、一一月に二回、昭和五五年には、一月に一回、二月に二回、三月に一回、六月に二回、七月に二回、八月に二回、九月に二回、一〇月に二回、一一月に二回、一二月に一回、昭和五六年には、一月に二回、二月に一〇回、三月に三回、四月に五回、五月に一回、六月に二回、七月に五回、八月に二回、九月に二回、一〇月に二回、一一月に二回、一二月に二回、昭和五七年には、一月に一回、二月に二回、三月に二回、四月に二回、五月に二回、六月に二回、七月に二回、一〇月に三回、一一月に四回、一二月に五回、昭和五八年には、二月に二回、三月に二回、七月に二回と数多く遅刻を繰り返した(以上の各月の期間は当月一六日に始まり翌月一五日に終るものである。)。

(三) 原告は、昭和五八年三月一〇日に上司の決裁を得ず勝手に被告の太陽神戸銀行新宿新都心支店普通預金口座(口座番号三一六七二三三)を解約した。

(四) 原告は、LPG代金として、昭和五七年六月一八日に葛飾第一支部から一九万五三二一円を、同年八月五日にウダガワミツオから四三一四円を預かり、直ちに被告に入金しなければならないのにこれをせず、同年九月二九日に至ってようやく右二口の合計一九万九六三五円を入金した。

(五) 原告は、LPG代金として、昭和五七年八月四日に葛飾第一支部から三万六四三七円を、同年九月二九日に同支部から一一万六五一九円を預かり直ちに被告に入金しなければならないのにこれをせず、昭和五八年三月三一日に至ってようやく右二口の合計として一五万三九五六円(右二口の合計額より一〇〇〇円多い。)を入金した。

(六) 被告の就業規則二一条本文には「職員が次の各号の1に該当したるときは、懲戒に処する。」と、同条一号には「正当な理由なく、或いは無届けでたびたび遅刻、早退、欠勤したるとき。」と、同条七号には「故意または怠慢により、組合の物品を破壊、または紛失、もしくは災害を生じさせたとき。」と、同条一〇号には「その他前各号に準ずる程度の不都合な行為をしたるとき」と規定されており、原告の前記(一)の行為は同条七号に、前記(二)の行為は同条七号に、前記(三)ないし(五)の行為はいずれも同条一〇号にそれぞれ該当する。そして、被告の就業規則二六条本文には「職員が次の各号の1に該当するときは、解雇とする。」と、同条二号には「職員の責に帰すべき事由」と規定されており、原告には右のとおりの懲戒事由があったので、同条二号に該当するものとして解雇したものである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は認める。

2  抗弁2(一)の事実のうち、被告主張の車検ローン返済金について原告が領収証を発行したにもかかわらず、所定の銀行口座への入金処理が行われていないことは認め、その余の事実は否認する。右のような事態が発生したのは原告の過失によるものであるが、右のような事態が発生した原因としては領収証を発行しながら金銭を受領しなかった、被告の他勘定へ誤入金された、盗難にあったなどいろいろなことが考えられ、右のような事態が発生したからといって原告が入金をしなかったとすることはできない。

3  抗弁2(二)の事実は否認する。原告の遅刻の程度は全期間を通じてわずかに一分ないし三分という問題とするに足りないものであり、解雇時の昭和五八年度の遅刻は前年度よりはるかに少ない回数である。さらに、被告は原告を昭和五六年一〇月には主任に昇格させているのであり、被告が原告の遅刻を問題にしていなかったことは明らかである。

4  抗弁2(三)の事実は否認する。被告の普通預金口座を解約するには、普通預金払戻請求書に預金名義人の記名をしたうえ所定の印鑑を押捺しなければならないが、その所定の印鑑を管理しているのは栗原経理課長であり、他の職員はこれに手を触れることができないのであるから、原告が上司の決裁を得ず勝手に被告の普通預金口座を解約することはありえない。

5  抗弁2(四)の事実は否認する。原告がLPG代金の銀行入金事務を行うようになったのは昭和五七年一一月からであり、昭和五七年六月から同年九月の間は原告は各支部からのLPG代金を受け取り、通し番号が打たれた領収証(控)とともに栗原経理課長に手渡していたのであるから、原告が受け取ったLPG代金の入金を遅らせることは考えられない。

6  抗弁2(五)の事実は否認する。前記のとおり、原告が受け取ったLPG代金の入金を遅らせることは考えられない。なお、原告が昭和五八年三月三一日に一五万三九五六円を葛飾第一支部からの昭和五八年二月分のLPG代金として架空の入金処理をしたことは事実であるが、これは被告の主張する二口の合計額一五万二九五六円とは何の関係もなくただ数字が近似しているにすぎない。原告は、昭和五八年三月に二回にわたって原告管理の机上金庫の中に受領先不明の封筒入りの現金があることを発見し、これについて該当する受領金を調査したが解明するに至らず、合計額が一五万三九五六円であったため、端数と額の点で一番照合する可能性のあるLPG代金二月分とし、従来の支払状況からして遅れる可能性の強い葛飾第一支部からの入金として処理することとして架空の入金処理をしたのである。

7  抗弁3の事実のうち、被告の就業規則に被告の主張する規定があることは認め、その余の事実は否認する。

五  再抗弁

1  被告の経理業務の増大

(一) 原告が職員として採用された昭和四九年から昭和五七年までの間に被告の経理業務は著しい拡大の一途をたどった。

(1) 組合員数

昭和四九年は約六五〇〇名であったものが、昭和五七年度には約一万名となり、特に昭和五七年度は他団体の組織加入により転入者が増加した。

(2) 出資金及び出資口数

昭和四九年は組合員一人あたりの出資金は二万六〇〇〇円であったが、昭和五七年度には大多数の組合員は一人あたり二五万八〇〇〇円と一〇倍近い出資金になり、組合員の増加も加わって出資金総額は一三倍以上となった。

(3) 車検ローン

昭和四九年と比べ昭和五七年度には利用件数は約一〇倍となった。

(4) LPG共同購入

被告が都内を中心とした五〇数カ所のLPGスタンドと契約を結び、組合員がスタンドを利用した代金を被告が一括して支払うという共同購入のシステムは、昭和四九年ころに制度化されたが、その利用者、利用量、利用金額は急激に増え、これによる被告の手数料収入も急速に増加した。

(5) チケット共同営業

被告が都内数千の顧客と契約を結び、組合員の車両タクシー料金について顧客から後払いを受けるシステムであるチケット共同営業は、無線車の増加、法人タクシー等の競争、配車システムの合理化などにより急速に発展し、手数料収入の額で比較すると、昭和四九年に比べて昭和五七年度には約六八倍になった。

(6) 無線事業

被告の組合員の車両のうち無線機を搭載したものは昭和四九年には約六〇〇台であったが、昭和五七年度には約二〇〇〇台に増加し、これにともない被告の無線事業も一日の配車回数などを中心に拡大強化され、組合員からの特別賦課金や機械代金の徴収業務なども増大の一途をたどった。

(二) このような経理業務の扱い金額と件数の急増、扱い内容の複雑化などにもかかわらず、被告は経理部の職員体制を拡充するどころか、むしろ縮小することさえ行い、原告をはじめとする経理部職員の労働強化を押し進めた。昭和四九年当時経理部には、栗原経理課長のもとアルバイトを除いて六、七名の部員がいたが、その後部員の人数にはほとんど変化はなく、原告が主任になった昭和五六年一〇月には課長、係長及び主任各一名、部員四名の計七名体制であった。ところが、昭和五七年七月に係長が定年退職したにもかかわらず、係長は補充されないまま原告が昭和五八年七月に第二事業部に移るまで一時期を除き合計六名体制で推移した。

2  原告の担当業務

昭和五七年一〇月から昭和五八年七月まで原告が担当していた業務は、一般会計関係として、各支部から支払われる金銭(賦課金外九種類の負担金、車両ローン代位弁済金、労災保険料等)の受領に関する業務(受領すべき人員の把握、受領金の内容の点検、領収証の発行、支部別個人台帳への賦課金、出資金、近代化会費が納入されたことを示すための済、出、近の各印の押捺、未納支部、組合員に対する督促、元帳残高と実際納入済人員との照合)、外部団体への支払に関する業務(組合員の加入、脱退等の移動報告、支払うべき人員数と金額の資料作成、経理課長への報告と外部団体への資料送付、元帳残高と実際納入済人員、支払人員との照合)、組合員の新規加入に関する業務(加入申込書等による加入手続の受付、加入手数料、出資金等の納入金の受領と領収証の発行、出資証券の発行、支部別個人台帳への記入、出資証券発行台帳への記入、加入申込書に基づく月間在籍者増減現況表の作成と加入者の他部への報告)、組合員の脱退に関する業務(脱退届等の受付、脱退者の出資金等の持分の算出、脱退者(死亡の場合は遺族)への持分の支払、出資証券台帳への記入、脱退者持分清算台張への記入、脱退届に基づく月間在籍者増減現況表の作成と脱退者の他部への報告)、その他の業務(各支部に対する助成金、事務手数料の支払、決算予備手続の資料作成、総代会資料及び事業報告書の組合員数及び出資口数の一覧表の作成、毎年及び事業計画終了ごとの出資証券発行台帳の作成と出資証券の作成、支部以外からの金銭の受領)、事業関係として、チケット、クーポン券に関する業務(支払一覧表に基づく支払小切手の作成、各支部への事務手数料の支払)、無線に関する業務(AVM積立金(立替金)、無線機ローン(預り金)、無線機械代(仮払金)、無線機点検料(預り金)の各支部から受領すべき人員の把握、各代金の受領と内容の点検、領収証の発行、伝票の作成、金銭出納帳の記入、銀行への入金、銀行勘定帳の記入、無線機点検料の日立電子システムサービスへの支払のための銀行送金依頼書の作成と支払、無線機械代の台帳記入、AVM積立金(立替金)を一般会計へ振り替えるための銀行預金払出表の作成、元帳の記入、試算表の作成、決算に関する資料作成)、LPGに関する業務(各支部からのLPG代金の受領、領収証の発行、伝票の作成、銀行勘定帳の記入、第一事業部作成の各スタンド別支払一覧表に基づくLPG代金の支払のための銀行送金依頼書の作成と支払、各支部への事務手数料支払一覧表の作成、支払小切手の作成と各支部への支払、元帳の記入、試算表の作成、決算に関する資料作成、LPG代金未納支部に対する督促)、車検ローンに関する業務(各支部から車検ローン返済金の受領、領収証の発行、伝票の作成、銀行への入金、銀行勘定帳の記入、第一事業部作成の各修理工場への支払一覧表に基づく立替払のための銀行送金依頼書の作成と支払、各支部へ車検ローン事務手数料支払一覧表作成、事務手数料の銀行預金払戻請求書の作成、事務手数料の支払、個人別貸付金台帳への記入、元帳の記入、試算表の作成、決算に関する資料作成)、人事、庶務その他の関係として、人事に関する業務(全職員のタイムカード作成、各部からの休暇届等の届書を回収しそれに基づき各自のタイムカードに有給、欠勤、遅刻等の印を押捺)、その他の業務(各部全体の事務用品の発注とその出入の管理、各部全体のお茶、コーヒー等の消耗品の買入、たばこの社内販売、各支部や外部団体からの電話の応対、経理部から各支部への通達文書の起案と発送、諸会議の資料の作成、帳簿、伝票等関係書類の保管、部内及び来客へのお茶くみ)、コンピューター処理に関する業務(外注プログラム設計者と共同して経理業務の一部のコンピューター化のためのシステムプログラムの設計、実際操作のための資料の作成コンピューターの操作)であった。このうち、人事、庶務その他の関係のコンピューター処理に関する業務は昭和五七年度当初から実際の操作が開始されたものであり、同年度には他団体からの大量の組織加入があり一般会計の関係のうち組合員の新規加入に関する業務が増大し、原告の業務量は著しく増加した。このような原告の業務過多のなかで、車検ローン返済金のうち昭和五八年一月七日の江戸川第一支部からの八万三二九〇円、同年二月一六日の板橋第一支部からの三万五八二〇円及び同年四月七日の江戸川第一支部からの九万九五二〇円の合計二一万八六三〇円(以下「本件不明金」という。)が所定の銀行口座に入金されていないという事態が発生したのである。

3  被告の経理処理体制の不備、不完全

被告の損益計算書によれば、被告の経理は役員報酬や事務用品等を含む一般経理とLPG手数料等の事業収益、賦課金等収入及び事業外収益の部門経理に大別され、一般経理と部門経理の一部を除いて現金出納帳はなく、伝票は取引の都度作成するのではなく、後日一括して起票するという信じがたい処理が行われていた。したがって、その経理は不正確を免れないものであって、会計処理の正確さを担保するうえで必要不可欠な内部牽制組織の確立さえなされていないのである。企業会計上現金過不足勘定という項目が設けられていることは誤記帳や帳簿残と手元残の不一致がしばしば起こりうることを示しており、日々の入出金処理が現金出納帳に記帳され日々の現金残高が明らかにされるという現金管理システムが必要であるにもかかわらず、被告はこの管理システムを完全に省略して銀行口座に預け入れることで被告への入金があったものとして処理しており、本件不明金が発生した車検ローン返済金についてもそのような処理がなされていたのであるからその現金管理が全くなされていなかったといわざるをえず、本件不明金の発生の原因についても領収証は発行したが金銭を受領しなかった、他勘定へ出金された(他の会計部門に誤入金された)、銀行への入金処理に誤りがあった(銀行員が正しく入金処理をしなかった)、盗難あるいは紛失したなどのいろいろな可能性が考えられ、結局何が原因であるかは不明である。このように、本件不明金は、被告が現金管理システムをあえて採用せず故意に現金管理を放棄し、かつ会計処理上の内部牽制組織を確立していないことから不可避的に発生したものであり、本件不明金の発生の責任は基本的に被告にあり、原告にはないというべきである。

4  被告の従来の経理処理上の過誤の後始末のやり方

(一) 被告は、従来極めて不完全な経理体制の中で生じた過誤についてつじつまあわせの処理を行ってきた。例えば、昭和五八年三月二三日に江戸川第一支部から被告の銀行口座に出資金三九万円の振込入金があったが、栗原経理課長は振替伝票を作成するにあたって貸方科目に出資金と記載すべきところを賦課金収入と誤って記載してしまい、その誤りはそのまま賦課金収入元帳に転記され、賦課金は実際の入金額より三九万円多く計上され、出資金は実際入金額より三九万円少なく計上されることになった。賦課金収入が実際入金額より三九万円多いことは昭和五七年度の決算予備手続において発見されたが、このような誤りの原因の調査に要する労力が大変であるとしてこの時点では原因調査は行われず、昭和五七年度決算においては誤ったまま報告され、そのまま承認された。また、出資金が実際入金額より三九万円少なく計上されていることも昭和五七年度の決算予備手続で発見されたが、その過誤の原因は調査されず、次のような伝票操作によって三九万円を出資金に振り替えることによって決算手続を終了し、承認を得たのである。すなわち、被告においては昭和五七年度に共済積立金を出資金に振り替えて昭和五二年から五カ年計画増資未消化分に充当されることになったが、本来であれば出資金への振替金は四二一万七〇〇〇円であるべきところそれより二二万九〇〇〇円多い四四四万六〇〇〇円を共済積立金からの出資金への振替金とし、被告の組合員が除名された場合には出資額の半額を本人へ払い戻し残りの半額は雑収入とすることになっていたが、昭和五六年度の除名者(その決算手続は昭和五七年度に行われる。)四名のうちの一名につき出資額の半額一一万二〇〇〇円を雑収入に振り替えず出資金のままに放置するなどの伝票操作を行うことによってつじつまをあわせたのである。

(二) 昭和五五年度の決算の際、利用分量配当金の実際額は五一六一万九四五七円であるところを富田税理士が五一〇二万四六一四円と誤って総代会資料を作成し誤った額で承認を受けたが、利用分量配当金の実際額を変更することはできないので昭和五六年六月に五一六一万九四五七円の支払いが行われた。決算で承認された額との差額五九万四八四三円についてはLPG手数料収入を過少に計上することによってつじつまあわせが行われた。

(三) このような被告の従来の経理処理上の過誤の後始末のやり方に比較すると本件解雇という処分が均衡を失するものであることは明らかである。

5  以上によれば、本件解雇は解雇権を濫用したものであって無効であることは明らかである。

6  本件解雇の真のねらい

(一) 本件解雇当時、原告は労働組合結成準備会の中心におり、そのための活発な活動を行っており、被告はこれを知っていた。

(1) 被告における労働条件の状況とこれに対する労働者の動き

被告には昭和五二年に職員側の提案で各部一名ずつの代表によって組織される運営委員会が作られたが、親睦会として慶弔金の支出やレクリエーション活動をするだけで、労働条件や賃金についてはたまに要望書を出す程度であった。被告の賃金水準は世間一般からみて低く、賃金体系は不明瞭で一時金の支給についても役員の査定部分が大きく、職員のなかに役員の機嫌を損じると賃金があがらないという雰囲気を作り出していた。そこで、運営委員会が次第に賃上げなどの要求書を提出し、被告役員と話合いを要求する行動を始めたが、被告は要求を聞くだけの態度に終始し一向にそれを取上げ改善する姿勢をみせない状況であった。さらに被告は、当時の運営委員会の会長を異職種に配転したり、その配転が不当であると抗議すると同人の勤務先を新しく設立された上部団体に変更するなど運営委員会分断のための人事異動を強行したりした。こうした経過から従来の運営委員会には限界があるとして、一部の職員を中心として労働組合について学習する小グループが作られ、昭和五八年春ころから原告もそのグループに参加するようになり、労働組合結成のための勉強を始めた。同年八月にはそれまで独自に労働組合結成をめざしていたいくつかのグループが一つの組織として統合され、労働組合結成準備会総会が開催された。原告は、労働組合結成準備会の副会長に選任され、以後同会は全職員を対象とした仲間作りの作業に入り、原告は周囲の女子職員に働きかけ労働組合結成の重要性やそのための学習会に参加するよう呼びかける活動を始めた。

(2) 被告は、このような労働組合結成準備会の動きを遅くとも昭和五八年九月八日までに知ることになった。労働組合結成準備会総会が行われた直後の昭和五八年九月八日に被告の保養施設である下田保養所で泊まりがけの理事会が行われ、参加した理事等は主に同所に宿泊したが、宿泊定員の関係で被告の池田理事長や総務部の男子職員などは近隣のニュートーキョウの保養所に泊まることになった。このニュートーキョウの保養所に宿泊した総務部男子職員三名が全員労働組合結成準備会の中心メンバーであったことから、部屋に入って飲酒しながら結成準備会のことを話題にすることになり、すでに呼びかけた職員の反応やこれからどの職員に呼びかけをするかさらに原告が呼びかけをしている女子職員の反応や結果などが話合われた。ところが、たまたま池田理事長がこの隣の部屋に宿泊しており部屋の壁の薄さもあってこの会話を耳にすることになってしまったのである。

(二) 昭和五九年一月一六日に個人タクシー職員労働組合が結成され、原告はその中心的な組合員となったが、被告が結成されようとしていた労働組合を敵視していたことは、労働組合結成後の被告の極端な敵視、排除政策に十二分に示されている。被告は、総務部職員であり従来は理事会で書記の業務を担当していた個人タクシー職員労働組合の今井委員長と中村書記長について昭和五九年二月一六日の理事会においてはその業務を行わせなかったり、同年一〇月一六日に中村書記長を総務部から異職種の第二事業部営業担当に配転したり、同年八月九日に今井委員長に対し業務終了後事務室において労働組合の文書の作成をしていたことを理由に減給処分をしたりさらには同年三月に新生親睦会という第二組合的組織作りに役員が協力し労働組合分断をはかるなど終始労働組合敵視の態度を繰り返した。また被告は、労働組合結成直後から労働組合の要求する団体交渉に応じなかったり、昭和六一年一月に原告の本件解雇についてのビラに関し謝罪文を要求し、これに関連して今井委員長を処分しようとしたり、さらに今井委員長を総務部から第一事業部に配転し、その後昭和六二年六月には箱崎の無線配車センターという遠方に配転するなど労働組合分断、弱体化を図って今日に至っている。

(三) このような経過を全体として見るならば、本件解雇は、本件不明金が発見されたことを口実としてあたかも原告が本件不明金を不正に領得しているかのような宣伝をしながら、結成されようとしている労働組合の運動に打撃を与えその中心的活動家を職場外に排除する目的で行われたものであって、不当労働行為として無効なものであることは明らかである。

六  再抗弁に対する認否

(一)  再抗弁1(一)(1)から(6)までの事実は否認する。

(二)  再抗弁1(二)の事実は否認する。組合員の増加等にかかわらず職員が増えていないのは、事務処理が支部単位で整理されてきたものを定型的に処理するものであるため、組合員の増加が事務量の増加につながらないからである。

2 再抗弁2の事実は否認する。

3 再抗弁3の事実は否認する。車検ローン返済金等について被告には現金出納帳はないが、これらについては受け取った金はそのまますべて銀行へ単純に預金することにしており、銀行入金振替伝票が現金出納帳の役割をはたしているので現金出納帳を作成する必要がないのである。

4(一) 再抗弁4(一)の事実のうち、昭和五八年三月二三日に江戸川第一支部から被告の銀行口座に出資金三九万円の振込入金があった際に栗原経理課長が振替伝票を作成するにあたって貸方科目に出資金と記載すべきところを賦課金収入と誤って記載してしまったこと、その誤りはそのまま賦課金収入元帳に転記され賦課金は実際入金額より三九万円多く計上され出資金は実際入金額より三九万円少なく計上されることになったこと、出資金が実際入金額より三九万円少なく計上されていることは昭和五七年度の決算予備手続で発見され共済積立金からの出資金への振替金を本来の金額より多く振り替えたこと(ただしその金額は二二万九〇〇〇円ではなく三九万円である。)は認め、その余の事実は否認する。昭和五七年度に共済積立金からの出資金への振替金を三九万円多くしたことについては、昭和五八年度に共済積立金の出資金への振替額を三九万円減額し、この調整により生じた三九万円の出資金の不足を、雑費を出資金に振り替えることによって訂正し、昭和五八年度の決算で承認を得ているのである。

(二)  再抗弁4(二)の事実のうち、昭和五五年度の決算の際、富田税理士が利用分量配当金の実際額は五一六一万九四五七円であるのに五一〇二万四六一四円と誤って総代会資料を作成し誤った額で決算の承認を受けたことは認め、その余の事実は否認する。この利用分量配当金の誤りは総代会以後わかったので理事会にはかりLPG手数料五九万四八四三円を割戻しすることにして是正したうえで支払いを行った。

(三)  再抗弁4(三)の事実は否認する。

5 再抗弁5の事実は否認する。

6 再抗弁6の事実はすべて否認する。

第三証拠(略)

理由

一  請求の原因について

請求の原因1及び2の事実は当事者間に争いがない。請求の原因3の事実のうち、原告の昭和五八年一一月当時の賃金が月額一九万〇四四〇円であり毎月二五日限り支払われてきたことは当事者間に争いがない。

二  抗弁について

1  抗弁1の事実は当事者間に争いがない。

2(一)(1) 抗弁2(一)の事実のうち、車検ローン返済金の中で昭和五八年一月七日の江戸川第一支部からの八万三二九〇円、同年二月一六日の板橋第一支部からの三万五八二〇円及び同年四月七日の江戸川第一支部からの九万九五二〇円の合計二一万八六三〇円(本件不明金)について原告が領収証を発行したにもかかわらず所定の銀行口座への入金処理が行われていないことは当事者間に争いがない。

(2) 右当事者間に争いのない事実及び(証拠略)を総合すれば、本件不明金の発見の経緯については以下の事実が認められる。

原告は昭和四九年二月被告に就職し、以来経理部に所属し昭和五六年一〇月に経理部主任となったこと、車検ローンの業務を原告が担当したのは前任者の森裕子が厚生部に配転になった昭和五七年一〇月からであったこと、昭和五七年度の決算予備手続において原告が車検ローン貸付金の支部別残高一覧表(〈証拠略〉)を作ったところ残高は二〇九三万七九一五円であり、車検ローン貸付金の元帳残高二一〇一万四三七九円との差額が七万六四六四円あったこと、原告がこの差額の処理の仕方について栗原経理課長と富田税理士に相談したところ、決算報告としては元帳残高の額で報告し支部別残高との差額については昭和五八年度の車検手数料と相殺することとするとの指示がなされ、そのような処理が行われたこと(証人栗原初枝及び同富田幸正は、原告から車検ローン貸付金の支部別残高一覧表を見せられたのは決算報告を作成した後であり原告から支部別残高と元帳残高との差額の処理の仕方について決算予備手続において相談を受けたことはないとそれぞれ証言するが、右支部別残高一覧表は決算予備手続のために作成されたものであり元帳残高との差額が出たにもかかわらず原告が栗原経理課長や富田税理士に報告せずにすまさなければならない理由は考えられず、この点に関する両証人の証言は原告本人尋問の結果に照らし信用できない。)、原告は昭和五八年七月に第二事業部に配転になり、原告から車検ローンの業務の引き継ぎを受けた菅野節子が領収証との照合を行った結果同年四月七日の江戸川第一支部からの車検ローン返済金九万九五二〇円が未入金になっていることを発見し栗原経理課長に報告したこと、被告は原告が車検ローンの業務を担当するようになった昭和五七年一〇月以降について領収証の控、銀行預金通帳、元帳、補助簿、伝票及び個人別台帳等に基づいて車検ローン支部別残高の見直しを行った結果、昭和五八年一月七日の江戸川第一支部からの車検ローン返済金八万三二九〇円及び同年二月一六日の板橋第一支部からの車検ローン返済金三万五八二〇円が未入金であることが発見されたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(3) 右認定の本件不明金の発見の経緯によれば、本件不明金について原告がこれを着服したと推認することはできず、他に原告が着服したことを認めるに足りる証拠はない。

(二) (証拠略)によれば、原告は、昭和五四年には、一月(期間は当月一六日から翌月一五日までである。以下同じ。)に四回(遅刻の時間はそれぞれ一一分、二分、一分、一分である。以下同じ。)、二月に六回(一三分、八分、五三分、一一分、四分、三分)、三月に四回(一分、八分、一〇分、一分)、四月に六回(八分、四分、八分、一三分、一分、二分)、五月に五回(一分、三分、二分、四二分、七分)、六月に三回(一分、一分、一分)、七月に五回(一四九分、二分、八分、八分、七分)、九月に三回(四分、三分、一〇分、ほかに早退一回)、一〇月に二回(一分、一分)、一一月に二回(一分、三分)、昭和五五年度には、一月に一回(一分)、二月に二回(一分、一分)、三月に一回(二分)、六月に二回(二分、八分)、七月に二回(二分、一七分)、八月に二回(一分、一分)、九月に二回(一分、三分)、一〇月に二回(一分、一分)、一一月に二回(八分、六分)、一二月に一回(二分)、昭和五六年には、一月に二回(二分、二分)、二月に一〇回(三分、六分、一四六分、三分、八分、二分、八分、一分、一分、八分)、三月に三回(七分、三分、四分)、四月に五回(八分、三分、一分、七分、九分)、五月に二回(八分、二分)、六月に二回(一分、二分)、七月に五回(一八分、八分、八分、三分、三分)、八月に二回(四分、一分)、九月に二回(一分、七分)、一〇月に二回(八分、二分)、一一月に二回(八分、二分)、一二月に二回(一分、一分)、昭和五七年には、一月に一回(四分)、二月に二回(七分、一分)、三月に二回(四三分、八分)、四月に二回(二分、七分)、五月に二回(三分、四分)、六月に二回(七分、一分)、七月に二回(二分、三分)、一〇月に三回(三分、四分、一分)、一一月に四回(一分、二分、一分、二五分)、一二月に五回(一分、七分、四分、一分、三分)、昭和五八年には、二月に二回(二分、一三分)、三月に二回(二分、一分)、七月に二回(二分、一分)と遅刻を繰り返したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(三) (証拠略)によれば、被告の太陽神戸銀行新宿新都心支店普通預金口座(口座番号三一六七二三三)が昭和五八年三月一〇日に解約されていることが認められる。この解約については、原告が上司の決裁を得ずに勝手におこなったものであるとの証人伊藤昇の証言とそのような事実はないとする原告本人の供述が対立するが、証人伊藤昇の証言によれば銀行口座の解約のためには普通預金払戻請求書に被告の銀行届出印を押すことが必要であり、その印は栗原経理課長が保管していたことが認められること、右普通預金口座は被告の無線事業関係の口座であるが無線事業関係の口座はほかにもあり、解約以前に右普通預金口座が最後に使われたのは解約の一年以上前の昭和五七年二月五日であることからすれば、原告が上司の決裁を得ずに勝手に解約したものとは考えられず、この点に関する証人伊藤昇の証言は信用できず、抗弁2(三)の事実は認められない。

(四) (証拠略)によれば、LPG代金として昭和五七年六月一八日に葛飾第一支部から一九万五三二一円が、同年八月五日にウダガワミツオから四三一四円が被告に入金され原告が領収証を作成していること、右二口の合計一九万九六三五円は同年九月二九日に被告の太陽神戸銀行新宿新都心支店普通預金口座(口座番号三一〇一二六八)に入金されていること、昭和五七年六月及び八月当時はLPG代金の各支部からの入金の受領は原告が行っており、原告が受領した金員は栗原経理課長が原告から受け取り銀行に入金していたことが認められる。右二口の金員の銀行入金が遅れていることについては、原告が入金を遅らせたものであるとする証人栗原初枝の証言と右二口の金員については受領した当日に栗原経理課長に渡しているとの原告本人の供述が対立しているが、(証拠略)によれば、LPG代金の銀行入金の際に銀行から発行された受取控の摘要欄には目二5,083,298、中の7,545,245との栗原経理課長による書き込みがあることが認められ、このように各支部の入金内訳が摘要欄に書かれていることからすれば、原告は合計一二六二万八五四三円のLPG代金を栗原経理課長に渡すにあたって領収証控を持っていっているものと推認される(証人栗原初枝は原告は通常は領収証控を持ってこず原告の作成したメモによって各支部の入金内訳を摘要欄に書いていたと証言するが、原告本人尋問の結果によれば原告は通常は領収証控を栗原経理課長に渡しており領収証控を渡さずに入金の口数と総額だけを書いたメモを渡すのはLPG代金の入金が集中する毎月の一四、五日ころであったことが認められ、同証人のこの点に関する証言は信用できない。)こと、(証拠略)によれば、昭和五七年六月一八日に入金されたLPG代金の領収証控の番号は目黒第一支部の五〇八万三二九八円についてのものが1653であり、葛飾第一支部の一九万五三二一円についてのものが1654であり、中野支部の七五四万五二四五円についてのものが1655であることが認められ、これによれば原告が昭和五七年六月一八日に受領したLPG代金のうち葛飾第一支部のものについてだけ栗原経理課長に渡さずに銀行入金を遅らせたものとすれば、合計一二六二万八五四三円のLPG代金を栗原経理課長に渡す際に1654番の領収証控を抜き取って渡したとしか考えられないがそのようなことをすればその場で栗原経理課長が気付かないことはありえず、これによれば原告が葛飾第一支部のLPG代金の銀行入金を遅らせたものとは考えられず、この点についての証人栗原初枝の証言は信用できず、以上によれば、原告が右二口の銀行入金を遅らせたものとは認められず、控弁2(四)の事実は認められない。

(五) (証拠略)によれば、原告はLPG代金として昭和五七年八月四日に葛飾第一支部から三万六四三七円を、同年九月二九日に同支部から一一万六五一九円を受領し領収証を作成したこと、右三万六四三七円については同年八月四日ころにはLPG代金の銀行入金の際に銀行が作成する受取控が作成されていないこと、昭和五八年三月三一日に原告は葛飾第一支部からの二月分のLPG代金であるとして一五万三九五六円を銀行に入金していることが認められる。被告は、この原告の入金について右二口の合計金一五万二九五六円を入金したものであると主張するが、原告の入金は右二口の合計金より一〇〇〇円多いものであること、(証拠略)によれば、昭和五七年九月二九日にLPG代金として一九万九六三五円が銀行に入金されており、受取控の摘要欄には葛一199,635と記載されていることが認められ、これによれば同日の一一万六五一九円がこの一九万九六三五円の中に含まれて銀行に入金されたものと推認されること等によれば、昭和五八年三月三一日の原告の入金が右二口の合計金を入金したものと認めることはできず、かえって原告本人尋問の結果によれば、同年三月に原告が管理している金庫のなかに二つの封筒に入った総額一五万二九五六円の不明金があるのを原告が発見し調査をしてみたものの結局何の金員かわからなかったため便宜上葛飾第一支部からの二月分のLPG代金であるとして入金したものであることが認められ、抗弁2(五)の事実は認められない。

(六)(1) 抗弁2(六)の事実のうち、被告の就業規則に被告が主張するとおりの規定があることについては当事者間に争いがない。

(2) 前記二2(一)の事実は車検ローン返済金三口合計二一万八六三〇円について原告が領収証を発行しながらこれにみあう金員の銀行入金がなかったというのであるから、被告の就業規則二一条一〇号の「その他前各号に準ずる度の不都合な行為をしたるとき」に該当するものといえる。

(3) 前記二2(二)の事実によれば、原告はかなり頻繁に遅刻をしていたものといえるが、その遅刻の時間は数回の場合を除いてそれほど長いものではないこと、原告が昭和五六年一〇月に経理部主任に昇進する際にも原告の遅刻のことは特に問題となっていないこと、(証拠略)によれば、昭和五七年七月の賞与査定時には原告と同程度の遅刻をしていた者が少なくとも二人おり、同年一二月の賞与査定時には原告と同程度の遅刻をしていた者が少なくとも一人いたがこれらの者に対しては何らの処分もされていないことが認められ、これによれば、前記二2(二)の事実は被告の懲戒事由について定めた就業規則二一条一号の「正当な理由なく、或いは無届けでたびたび遅刻、早退、欠勤したるとき。」には該当しないものと解するのが相当である。

三  再抗弁について

1(一)  (証拠略)によれば被告の組合員数は昭和四八年度末には三〇支部、六四五七名であったが昭和五七年度末には三七支部、一万〇〇五三名と増加し、特に昭和五七年度は他団体の組織加入により組合員数が約二〇〇〇名増加したこと、被告の出資金総額は昭和四八年度には一億六八六一万円であったが昭和五七年度には二二億五一〇六万四〇〇〇円と約一三倍になり、出資口数は昭和四八年度には六四六六口であったが昭和五七年度には一一二万五五三二口になったこと、被告の車検ローン取扱件数は昭和四八年度は一三九件であったものが昭和五七年度には一一一三件と約八倍になったこと、被告のLPG及びチケット手数料収入額は昭和四八年度は一一二七万九九七〇円であったが昭和五七年度には七億六七四五万〇九六六円と約六八倍になったこと、被告の組合員の車両のうち無線機を搭載したものは昭和四九年には約六〇〇台であったが昭和五七年度には約二〇〇〇台に増加し、これに伴い被告の無線事業は一日の配車回数などを中心に拡大していったことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  (証拠略)によれば、昭和四九年当時経理部には経理課長のもとに六、七名の部員がいるという計七、八名の体制であったが、その後人員にはほとんど変化がなく、原告が主任になった昭和五六年一〇月には課長、係長及び主任各一名、部員四名の計七名体制であったこと、その後昭和五七年七月に係長が定年退職となり同年九月に菅野節子が被告に就職し経理部に配属となり同年一〇月に森裕子が厚生部に配転となるという異動があって同月以降は経理部は六名の体制となったこと、原告が第二事業部に配転になった昭和五八年七月には第二事業部から一名が経理部に配転になったため六名の体制に変化はなかったこと、経理部の人員は昭和五九年には八名、昭和六〇年には九名に増員されたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

2  (証拠略)によれば、原告が昭和五七年一〇月から昭和五八年七月まで担当していた業務とその内容は以下のとおりであることが認められ、この認定に反する証拠はない。

(一)  一般会計関係の業務

(1) 一般会計関係として各支部から支払われる金銭(賦課金外九種類の負担金、車両ローン代位弁済金、労災保険料等)の受領に関する業務

各支部における組合員の死亡、廃業、加入を毎月調査し受領すべき金銭の種類に応じた支部別人員数を把握し、各支部から納入される金銭を確認のうえ領収証を発行し、支部別個人台帳(甲五四号証)の賦課金欄(印の種類は一種類)、近代化欄(二種類)及び出資金欄(三種類)に納入済を示す押印(組合員数は約一万人であり押印数は毎月約三万個となる。)をし、当日受領した金員を経理課長に手渡す等を内容とするものである。また、未納の組合員がある場合には督促状を送付するという作業もある。

(2) 外部団体への支払に関する業務

東京都個人タクシー協会、全個協関東支部等の外部団体への組合員の加入、脱退等の移動報告、支払うべき人員数と金額の資料作成等を内容とする。

(3) 組合員の新規加入に関する業務

加入手続の受付、加入手数料、出資金等の納入金の受領と領収証の発行、出資証券の発行、出資証券発行台帳への記入、加入申込書に基づく月間在籍者増減現況表の作成と加入者の他部への報告等を内容とする。

(4) 組合員の脱退に関する業務

脱退届等の受付、脱退者の出資金等の持分の算出、脱退者(死亡による脱退の場合は遺族)への持分の支払、出資証券台帳への記入、脱退者持分清算台帳への記入、脱退届に基づく月間在籍者増減現況表の作成と脱退者の他部への報告等を内容とする。

(二)  事業関係の業務

(1) チケット、クーポン券に関する業務

支払一覧表に基づく支払小切手の作成、各支部への事務手数料の支払を内容とする。

(2) 無線に関する業務

AVM積立金、無線機ローン、無線機械代及び無線機点検料について各支部から受領すべき人員の把握、各代金の受領、領収証の発行、伝票の作成、金銭出納帳の記入、銀行への入金、銀行勘定帳の記入、無線機点検料を日立電子システムサービスへ支払うための銀行送金依頼書の作成と支払、無線機械代の台帳記入、AVM積立金の一般会計への振替のための銀行預金払出表の作成、元帳の記入等を内容とする。

(3) LPGに関する業務

各支部からのLPG代金の受領、領収証の発行、伝票の作成、銀行勘定帳の記入、第一事業部作成の各スタンド別支払一覧表に基づくLPG代金の支払のための銀行送金依頼書の作成と支払、各支部への事務手数料支払一覧表の作成、支払小切手の作成と各支部への支払、元帳の記入、LPG代金未納支部に対する督促等を内容とする。

(4) 車検ローンに関する業務

各支部からの車検ローン返済金の受領、領収証の発行、伝票の作成、銀行への入金、銀行勘定元帳の記入、第一事業部作成の各修理工場への支払、一覧表に基づく立替払のための銀行送金依頼書の作成と支払、各支部への車検ローン事務手数料支払一覧表作成、事務手数料の銀行預金払戻請求書の作成、事務手数料の支払、個人別貸付金台帳への記入、元帳の記入等を内容とする。

(5) その他の業務

決算に関する資料の作成等を内容とする。

(三)  人事、庶務及びその他に関する業務

(1) 全職員のタイムカード作成、各部からの休暇届等の届書を回収しそれに基づき各自のタイムカードに有給、欠勤、遅刻等の印を押捺すること等を内容とする。

(2) コンピューター処理に関する業務

外注プログラム設計者と共同して経理業務の一部(〈証拠略〉によれば、出資金、賦課金、近代化センター会費、全個連会費、都個協会費、全個連共済掛金、都個協共済掛金及び無線特別賦課金がコンピューター化され、車検ローン返済金は原告の提案にもかかわらずコンピューター化されなかったことが認められる。)のコンピューター化のためのシステムプログラムの設計、実際操作のための資料の作成等を内容とする(コンピューター導入のための作業が始まったのは昭和五六年中ごろであり、昭和五七年一〇月ころからコンピューターが実際に動き出し、右の経理業務の一部につきコンピューターに切り替わったのは昭和五八年四月ころである。)。

(3) その他の業務

全体の部の事務用品の発注とその出入の管理、全体の部のお茶、コーヒー等の消耗品の買入、たばこの社内販売、各支部や外部団体からの電話の応対等を内容とする。

右認定の事実によれば、原告の担当業務は普段からかなり忙しいものであったこと、特に昭和五七年度は他団体から被告への約二〇〇〇名という大量の組織加入があり組合員の新規加入に関する業務が増大し、さらにコンピューター処理に関する業務が加わり原告の担当業務は多忙であったことが認められる。

3  (証拠略)を総合すれば、企業会計においては現金の入出金処理が現金出納帳に記帳され日々の現金残高が明らかにされるという現金管理システムが必要であること、被告にあっては車検ローン返済金については現金出納帳が作成されておらず、各支部から車検ローン返済金を受領した際には経理部の机上の金庫に保管し、毎日午前と午後の二回被告に集金に来る銀行員に手渡して銀行入金するという形で現金管理が行われており現金管理が十分に行われていたとはいえないこと、昭和五七年一〇月八日ころまで車検ローン返済金を担当していた森裕子は同年八月分までしか車検ローン会計元帳の記入を行っておらず九月分からは原告が記入をしているなど被告においては業務の多忙ということもあり振替伝票の起票及び元帳への記入を後日一括して行うということが一般的に行われていたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。以上によれば、被告の経理処理体制には不備があったといわざるを得ず、本件不明金の発生の原因についても領収証を発行したが金銭を受領しなかった、他の会計部門に誤入金された、盗難にあった、紛失した等の可能性が考えられ、結局何が原因であるかは不明であるといわなければならない。

4(一)  再抗弁4(一)の事実のうち、昭和五八年三月二三日に江戸川第一支部から被告の銀行口座に出資金三九万円の振込入金があった際に栗原経理課長が振替伝票を作成するにあたって貸方科目に出資金と記載すべきところを賦課金収入と誤って記載してしまったこと、その誤りはそのまま賦課金収入元帳に転記され、賦課金は実際入金額より三九万円多く計上され出資金は実際入金額より三九万円少なく計上されることになったこと、出資金が実際入金額より三九万円少なく計上されていることは昭和五七年度の決算予備手続で発見され共済積立金から出資金への振替金を本来の額より多く振り替えたこと(その額については当事者間に争いがある。)は当事者間に争いがなく、(証拠略)によれば、共済積立金からの出資金への振替金は三九万円であったことが認められ、これによれば被告は決算予備手続において賦課金収入が実際入金額より三九万円多く計上され出資金は実際入金額より三九万円少ないという経理上の過誤が発見されたにもかかわらず、つじつまあわせの処理を行ったものといわざるをえない。

(二)  再抗弁4(二)の事実のうち、昭和五五年度の決算の際富田税理士が利用分量配当金の実際額は五一六一万九四五七円であるのに五一〇二万四六一四円と誤って総代会資料を作成しその額で決算の承認を受けたことは当事者間に争いがない。右当事者間に争いのない事実並びに(証拠略)によれば、昭和五五年度の決算の際富田税理士は利用分量配当金について実際額よりも五九万四八四三円少ない額で総代会資料を作成して決算の承認を受けたこと、利用分量配当金の支払は実際額で行われたこと、実際額と決算で承認を受けた額との差額についてはLPG手数料収入を過少に計上する振替伝票を作成することにより捻出したことが認められ、これによれば被告は昭和五五年度の決算の際の経理上の過誤に対してもつじつまあわせの処理を行ったものといえる。

(三)  弁論の全趣旨によれば、以上の経理上の過誤の場合には関係者には何らの処分もなされなかったことが認められる。

四  以上認定の事実に基づいて本件解雇の効力について判断するに、本件解雇の事由として問題になりうるのは本件不明金が発生したことのみであるが、原告が本件不明金を着服したと認めるに足りる証拠はなく車検ローン返済金について現金出納帳が存在しなかったことなどの被告の現金管理体制の不備もあって本件不明金発生の原因は不明であること、本件不明金は、昭和五七年度には組合員の新規加入に関する業務が増大し、さらにコンピューターの導入に伴う業務が加わるという中で、昭和五七年一〇月には経理部の職員が一名減員になるという原告の業務過多の状況のもとで発生したものであること、被告では過去において経理処理上の過誤が発生した場合には出資金額から共済積立金への振替額を正規の額より増額したりLPG手数料収入を過少に計上したりしてつじつまあわせの処理を行ってきており、その際には関係者の処分は全く行われていないこと、原告は昭和四九年二月に被告に就職して以降遅刻が若干多かったもののその勤務態度に特に問題があったとはいえないことなどの事情を考慮すれば、本件不明金の発生を理由として原告を解雇に処することは過重、過酷な処分であるといわざるをえず、本件解雇は解雇権を濫用したものであって無効であるというべきである。

五  そこで、原告が支給されるべき賃金額について検討する。

原告の昭和五八年一一月当時の賃金が月額一九万〇四四〇円であり毎月二五日限り支払われてきたことは、当事者間に争いがない。

弁論の全趣旨によれば、原告の昭和五八年一一月分の未払給与は八万一五八五円であることが認められる。

弁論の全趣旨によれば、被告においては昭和五八年一二月九日に前年の賞与に最低五〇〇〇円から最高一万五〇〇〇円の間の金額を加えた額が賞与として全従業員に支給されたこと、原告の前年の賞与は四〇万六〇〇〇円であったことが認められ、これによれば、原告は昭和五八年度一二月の賞与として少なくとも四一万一〇〇〇円(四〇万六〇〇〇円+五〇〇〇円)を支給されるべきである。

原告は、被告は昭和五九年四月から賃金体系を変更し給与規定に基づき賃金を支給することになり、この給与規定に基づけば昭和五八年度の原告の本給は少なくとも三等級四級一三号の一八万八八〇〇円となり、役付手当等の手当の合計額が一万六〇〇〇円であって賃金月額は二〇万四八〇〇円であり、その後の原告の賃金月額は昭和六〇年度は二一万五〇四〇円、昭和六一年度は二二万四七二〇円、昭和六二年度は二三万二八一〇円、昭和六三年度は二四万三〇五〇円、平成元年度は二五万五六二〇円になると主張する。しかし、賃金体系が変更された時期について原告本人は昭和五九年の多分六月以降くらいだったと思うと供述しており、(証拠略)(給与規程〔案〕)によれば、給与規程中の諸手当規定には「この規程は、昭和六二年九月二四日から実施する。」との附則があることが認められ、これによれば被告の賃金体系がいつから変更になったのか明確ではないこと、また原告本人は昭和五九年度の賃金月額について主任という役職と年功等を考慮して最低でも三等級四級一三号の一八万八八〇〇円となると判断したと供述するが、根拠があいまいであること等からすれば、昭和五九年度以降の賃金月額につき原告が主張する額の支給がなされるべきであることについての証明はないものというべきである。そして、賃金体系の変更があった場合でも賃金月額の総額の減額は減額される相手方の同意がなければできないものというべきであるから、原告が支給を受けるべき賃金月額としては賃金体系変更後も一九万〇四四〇円であると解するのが相当である。

原告は、被告においては毎年本給の五か月分が賞与として支給されているとして昭和五九年度から平成元年度までの賞与を請求するが、(証拠略)によれば給与規程においては第三九条一項で「賞与は職員の勤務成績を考慮して支給する。」と規程されているだけでありその基準が明確になっているわけではなく、被告において昭和五九年度から平成元年度において実際にどのような基準で賞与の支給がなされたかは明らかになっていないから、昭和五九年度から平成元年度までについて原告の主張する額の賞与の支払がなされるべきであることについての証明はないものといわざるをえない。

したがって、原告のすでに発生している賃金債権は以下のとおりとなる。

昭和五八年一一月分の給与の未払分 八万一五八五円

昭和五八年一二月分の賞与 四一万一〇〇〇円

昭和五八年一二月から昭和五九年三月までの給与 七六万一七六〇円

昭和五九年度の給与 二二八万五二八〇円

昭和六〇年度の給与 二二八万五二八〇円

昭和六一年度の給与 二二八万五二八〇円

昭和六二年度の給与 二二八万五二八〇円

昭和六三年度の給与 二二八万五二八〇円

平成元年四月から平成二年一月までの給与 一九〇万四四〇〇円

合計一四五八万五一四五円

六  以上によれば、原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、従業員たる地位を有することの確認、すでに発生した賃金債権一四五八万五一四五円及び内金一二五万四三四五円に対する弁済期の経過した後である昭和五九年四月一四日から、内金一一二三万五九六〇円(昭和五九年度、昭和六〇年度、昭和六一年度、昭和六二年度及び昭和六三年四月から平成元年二月までの給与の合計額)に対する弁済期の経過した後である平成元年三月二一日から、内金二〇九万四八四〇円(平成元年三月から平成二年一月までの給与の合計)に対する弁済期の経過した後である平成二年二月七日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに平成二年二月以降毎月二五日限り一か月一九万〇四四〇円の割合による賃金及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるのでこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書を適用し仮執行宣言については相当ではないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判官 山本剛史)

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